東京高等裁判所 昭和27年(う)3309号 判決
原判決が、その理由中法令の適用を示す部分に、「(前略)犯罪の情状憫諒す可きものがあると認め刑法第六十六条第六十八条第三号により減軽した刑期範囲内に於て被告人を懲役四年に処し(後略)」と判示しながら、刑法第七十一条の適用を示していないことは、原判決書の記載自体に照らし、まことに所論指摘のとおりであり、且つ、刑法第七十一条が酌量減軽の方法を定めた規定であつて、酌量減軽をするには、同法条をも適用しなければならないものであることも亦所論のとおりであるが、しかし右刑法第七十一条は、同法総則の規定であつて、実際にこれを適用している限り、必ずしも、これが適用を判決に示すことを要するものではないと解されるのみならず、同条には、「酌量減軽ヲ為ス可キトキ亦第六十八条及ヒ前条ノ例ニ依ル」と規定してあつて、該規定によれば、酌量減軽の方法も亦、結局、同法第六十八条所定の法律上の減軽の方法と同一方法によるべきものであることが明らかであるところ、今、原判決書をみると、原判決は、前示のように、「(前略)犯罪の情状憫諒す可きものがあると認め刑法第六十六条第六十八条第三号により減軽した刑期範囲内に於て(後略)」と判示しているのであつて、即ち、本件が刑法第六十六条所定の酌量減軽の要件たる犯罪の情状憫諒すべきものがあることを示すと同時に、同条の適用をも示しているのであるから、原判決のした前示の減軽は、法律上の減軽ではなくて、酌量減軽であることは、一見まことに明瞭であるというべく、なお、減軽の方法についても、結局、同法第七十一条の規定によつて初めて酌量減軽の場合にも適用さるべき同法第六十八条第三号の規定を適用していることが、前示判文上明らかであるから、原判決が右の減軽をするにあたり、実際には、同法第七十一条の規定をも適用しているものであることは、これを推認するに難くないものといわなければならない。してみれば、原判決は、結局、前示のように、本件につき、酌量減軽の要件を具備していることを判示した上、刑法第六十六条、第六十八条第三号を適用して酌量減軽をしたものであるが、ただ、右のうち、同法第七十一条の適用だけを判決に示さなかつたことに帰するものというべきであるから、原判決には、所論のような判決に理由を附さない違法があるものということはできない。論旨は理由がない。
(註 本件は量刑不当により破棄自判)